幕末の恋と花のかおり【完】
「…吉田、栄太郎……」
「覚えててくれたんだ、光栄だね」
「なんで私を知ってるんですか……?」
吉田栄太郎には島原で襲われたことがあり、少し苦手だ。
しかし、芸妓の姿をしている私にしかあったことがないはずなのになぜ私を知っているのだろうか。
「見間違える筈がない。君は花香ちゃんだろう?」
「……違います」
「そうだったな。いまの君は島原の芸妓の"花香"ではなく、新選組十一番隊組長、"松田 花織"だろう」
「なんで知って…」
そして吉田栄太郎は私を壁際へどんどん追い詰めていく。
背中が壁にぶつかり、手首は壁に押し付けられている。
顔と顔の隙間、おそらく五センチほど。
平成でいう壁ドンをされているのだ。