幕末の恋と花のかおり【完】
「ふつつかなことをお聞きしますが、今は、何年でしょうか…?」
「元治元年だ。」
花織をここまで連れてきた美青年は淡々と答えた。
簡単には理解し難い。
「お前は何者だ」
だからこそ、平成生まれの女子高生には、事実をただ話すことしか出来なかった。
「多分信じてもらえないと思うんですけど…
私、時空移動して、約150年後の2015年から来ました。」
この部屋の中にいる人たちはみんなおどろいているのか、目を見開いている。
沈黙が続く。
やはり、沈黙を破ったのはあの男。
「証拠をみせろ、証拠を!」
そこで私はかばんの中にあるスマートフォンを見せることにした。
「これは携帯電話なんですけど、その中でもスマートフォンというものです。」
「そのスマートフォンとかいうものはどんなことに使えるんだよ。」
美青年はしつこく聞いてくる。無愛想な顔をして、内心ではきっとこの機械にかなりの興味を持っているのだろう。
「いろいろなことが調べられたり、遠くにいる人と瞬時にに文通できたり、お話できたり、写真をとることができます。
みなさん、かたまってくださーい。
はい、チーズ!」
撮った写真を、その場にいる全員に見せた。
写真館に行かなければ写真を撮れず、人々は魂を吸われると信じてあまりそれを好まなかった。そこで撮れるのはモノクロの写真だけ。
こんな文明の違いを目の当たりにしたら、どんな頑固な人でも、花織が未来人であることを信じるしかなかろう。
とりあえず成功したようだ。