幕末の恋と花のかおり【完】



しかし、喜ぶのもつかの間。花織は引っかかっていた名前を呟いた。



「安藤君……。」



永倉たちに聞こえていたのか、二人はお互いに目をあわせると、小さな声で永倉がいった。


「安藤は……。浪士に後ろから斬られて大怪我をおった……。」


安藤という名前が妙に引っかかっていたのは、そのためだったのだ。史実では、怪我がきっかけで数日後になくなってしまう。


"後ろから斬られて"


花織は自分に責任を感じた。なぜ、昼の稽古の時に後ろに気をつけるよう伝えなかったのか。もしあの時伝えていたらこんなことにはなっていなかったのではないかと。


「ごめんね、安藤君……!」



再び涙が流れてきたが、先ほどの涙とは違った意味のものだと、すぐに分かった。





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