幕末の恋と花のかおり【完】
第九章
屯所についた花織は、今すぐにでも布団に潜り込み、現実から逃れたい気分だった。
しかし、血のついた羽織を洗わなければならず、桶に手を突っ込んで洗っていた。
集中ができない。
実は今日、花織は今までで一番多くの人を斬ってしまったのだ。
それだけではない。
安藤に彼の弱点を伝えていたら、彼は助かっていたかもしれないのだ。
それで集中できるはずがなかろう。
ただゴシゴシと擦っているだけなので、全く血が落ちている気がしない。
手は冷えてきた。そのうえ頭痛もしてきた気がする。
そんな時、原田に声をかけられた。
「花織、ちょっと洗濯中断できるか? 土方さんが幹部を集めてる。」
いまいく、と答えて立ち上がろうとしたとき、目眩がして花織は倒れてしまった。