幕末の恋と花のかおり【完】
「分けて欲しいねん
その苦しみを。」
花織の目から一度涙が止まった。
「花織は、俺たちにまだ、色んなこと隠しとるやろ?」
監察の仕事をしているからそういうものには敏感なんだ、と関西弁で続けた。
「話しとおないなら、話さんでもええ。
でも、やっぱり分けて欲しいんや。」
なぜ山崎は花織のことをこんなにも気にかけてくれているのだろうか。花織は山崎を見た。
「花織が好きなんや。
せやから、苦しんどるところ、見とおない。」
そう言った山崎は、優しく微笑んでいた。
花織は思った。この人には過去を話してもいいのではないかと。
誰にも話したことのない、汚れた過去を。
「丞さん......。少し、自分の話をしてもいいですか?」
山崎が頷いたのを確認すると、花織は小さく息を吸って、話始めた。