幕末の恋と花のかおり【完】
私が未来からきたと信じてもらえたようで、安心した。
「君は、かえるところがあるのか?」
優しい声が上座から聞こえて、鼻の奥がツンとした。どうしてそんなことを聞くのか、なんとなく察しができたからだ。
「ないです…。」
「じゃあ、ここに住みなさい!」
「そんな…! 悪いです」
「こんな時世に女の子一人は危険だ!ここに住みなさい! なぁ、トシ。」
トシと呼ばれ、
「まあ、いいのでは」
とかるく流したのは無愛想な美青年。
取り敢えず自己紹介をしていくことになり、改めて、自分は幕末にいて、しかもあこがれの新選組と共にいると実感した。