幕末の恋と花のかおり【完】
第十章
それから、花織は山崎とともに必死に怪我をした隊士たちの看病をした。
ほとんどの隊士は元気になることができた。
そして、池田屋事変から一ヶ月半ほどたった七月も終わりのある日の夜中。花織は土方に叩き起こされた。
「松田! 着替えたらすぐ、安藤の部屋へ向かえ!」
普段は冷静な土方の息が弾んでいた。
花織は察した。ただ事ではないと。
着替えながら外にいる土方に声をかけた。
「副長! 安藤君に何があったんですか!?」
花織は焦った。
「安藤の容態が悪化した。いま医者をよんだところで、山崎が様子を見ている」
三分くらいして、着替え終わり、麩を開け、土方の後に続き、安藤の部屋へ走った。
どうか間に合って……。
その思いがずっとかけめぐっていた。