幕末の恋と花のかおり【完】


数秒の沈黙。先に口を開いたのは安藤だった。



「自分は、おそらく三報です。

いろいろと言いたいことや、聞きたいことがあります。

……最後にいいですか?」


三報ーーー助かる見込みがないという事。

「そんなことないよ」


なんて無責任なことは言えなかった。




「僕は……、初めて松田組長とあったとき、一目で女性だとわかりました。」


うん、と頷いた。


「なぜ女人禁制の新選組に女性が入ることができたのか疑問でしたし、組長なんて務まるはずはないと思っていました」


それなのに、安藤は自分に文句も言わずついてきていてくれた。花織の胸はキューっと締め付けられるような切なさを覚えた。


「でも……。いざ手合わせしているところを見ると、すごく強くて、形が綺麗で、基本を大切にしているんだな、と思いました。

早起きをして、壬生寺に行ってみると、必ず松田組長がすぶりをしていました……。

真面目なんだろうな、って思いました。」

そう。花織は毎日早起きをして、壬生寺で素振りをすることを日課としていた。
それを誰かに見られているとは思いもよらなかった。


「それに、僕たち平隊士のことをみくだす感じもなく、いつも笑顔で、励ましてくださっていて……、本当に尊敬してました」


息も絶え絶えなのにも関わらず、必死に思いを伝えてくれる大切な仲間の姿に涙がこぼれた。

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