幕末の恋と花のかおり【完】
「池田屋の前に、僕に組長は稽古をつけてくださいました。忙しい筈なのに……。本当に嬉しかったです。
弓術だけではなく、剣術ももう少ししたかったですし、松田組長に稽古をつけていただきたかった。」
安藤のこえは徐々に小さくなってゆく。
「これからも笑ってくださいね。
それと……。」
泣きすぎて声も出ない。
「近藤局長と土方副長に、
幸せな時間を過ごさせてくださりありがとうと、伝えて欲しいです……」
そのあと、
「面と向かって話すのは少し恥ずかしいので」
と言って真面目な彼は少年のように笑った。それきり、言葉を発することはなくなった。
そして、皮肉なことに医者はその後すぐ来た。
そこで告げたこと、それは......。
「臨命終時です」
安藤早太郎の一生が終わったことを告げる言葉だった。