幕末の恋と花のかおり【完】
花織と山崎は土方に
「寝ろ。」
とただ一言言われた。それは、不器用な彼なりの、自分たちをこれ以上傷つけないようにするためだったと、花織はすぐわかった。
はい、と返事をして部屋に入ったものの、人が亡くなる瞬間を見たのだ。ほんの半年前まで武器もない平和な国にいた少女がすぐに眠れるわけがなかろう。
土方たちも寝たのだろうか。
安藤の部屋の方から微かにした物音も無くなり、屯所中が静まり返った頃。
花織は顔でも洗おうと思い、部屋を出た。
井戸には先客がいた。
それはよくあることで、特に驚くようなことでもない。
しかし、花織は驚いた。
なぜなら、先客は思ってもいない人だったからだ。