幕末の恋と花のかおり【完】
第十一章



それから、池田屋事件の報奨金が払われた。
亡くなってしまった奥沢、新田、そして安藤には、それぞれ二十両払われたのだった。


八朔もすぎ、池田屋事件から一ヶ月以上たったある日のこと。
新選組の隊士全員で祇園へ。
「今日は無礼講だ! どんどん飲んでくれ」
近藤のゴーサインが出るとともに、酌をしてもらう男達。
ちなみに、一番はじめに飲み始めたのは藤堂だ。
「皆で、こうしてまた飲むことが出来て良かった。」
後ろを振り向くと、土方が。鬼の副長とも呼ばれている彼にしては弱々しい声。
「副長……?」
「なんだよ、松田。」
そういった彼の眉間にはしっかりと皺がよっている。
「明らかに嫌そうな顔しなくてもいいじゃないですか。」
まあ、本当に嫌でそんな顔をしているのではないということはわかっているのだが。


「失礼します。」
麩が開いた。
「どうも、おまっとさんどした。」
入ってきたのは、女性五人。
だらりの帯を締めた舞妓のような人が二人と、島田髷を結った芸妓らしき人が二人。そして、その四人よりは控えめなデザインの着物を来た女性が一人。この人はおそらく地方の芸妓だろう。
「うちは芸妓の美寿々どす。」
きりっとした目が綺麗な大和撫子という感じの美人。
「芸妓の涼葉どす。お頼もうします。」
優しそうな顔の美人。
「地方の冨花どす。」
目がぱっちりとしている。
「舞妓の寿々菜どす。お頼もうします。」
まだ下唇にしか口紅を塗ることが許されていないようだ。
「うちは舞妓の冨鈴どす。お頼もうします。」
髪型はおふく。もうすぐで芸妓になることが許されるのだろうか。

綺麗な芸舞妓が入ってきて、男だらけの男臭いお座敷は一気に華やかになった。


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