幕末の恋と花のかおり【完】
いつの間にか、太陽が月に変わっていた。
夜になり、大分落ち着いたとはいえ、戦が止む気配はない。
花織の体力は限界が近かった。
出来ることならば休みたい。だが、これは稽古ではなく、実戦なのだ。
あちこちから飛んでくる弓や大砲。
一時として気を休めることが出来ない。
「辛い時こそ本気がでる。」
いつの日にか、剣道の先生に言われた言葉。当時は理解することができなかったが、この時代に来てからはなんとなくわかってきた気がする。
ここで私達新選組が求められることはこの戦を早く終わらせること。京都の治安維持が役目なのだから。
そして、私は彼らーーーー十一番隊の隊員のことを守らなければならない。
周りを見渡すと、山崎の姿が視界にうつった。
彼も刀を握っていた。
沖田も、斉藤も、永倉も、藤堂もーーーー。
全員が戦っている。己の誠のために。
同じ時を過ごし、
同じ目標を持ち、
同じ空の下にいる。
私には、仲間がいる。
もし、平和な時代に戻ったら……?
今までのような、普通の女の子に戻ったら……?
この中の誰一人とも同じ時間を過ごすことは叶わない。
もちろん、戦っている人達とも……。
いま、こうして一生懸命戦えているということが、ひどく残酷で、切なくて、幸せに感じられた。
命をかけるということは、死ぬということではなく、己の誠に従うということ。
そんな、簡単そうで難しいことに気がついた。
だからこそ、だれも死なせたくない。