幕末の恋と花のかおり【完】



戦いも収まり、いつの間にか空は曙色に染まっていた。

「花織、お疲れさま」
「うん。お疲れ」

平助と花織が交わしたのは、まるで部活後のような軽い言葉たち。
きっと自分たちがしたことの重みをわかっているからこそ、このような会話になったのだ。

「俺、思うんだ。自分たちがしてることって本当に正しいのかなって……。」

歴史上では、伊東甲子太郎がもうすぐ入隊する。
勤王思想をもつ伊東は、御陵衛士を結成し、新選組の中から何人か連れていってしまう。その中には藤堂もいるのだ。


そして、藤堂は新選組の手によって殺される。


なぜだか、花織の頬には涙がこぼれた。


私は、知っているのに救えない。


「ごめんね……」


この四文字が、空気の浅葱色に溶けていった。





< 98 / 130 >

この作品をシェア

pagetop