幕末の恋と花のかおり【完】
戦いも収まり、いつの間にか空は曙色に染まっていた。
「花織、お疲れさま」
「うん。お疲れ」
平助と花織が交わしたのは、まるで部活後のような軽い言葉たち。
きっと自分たちがしたことの重みをわかっているからこそ、このような会話になったのだ。
「俺、思うんだ。自分たちがしてることって本当に正しいのかなって……。」
歴史上では、伊東甲子太郎がもうすぐ入隊する。
勤王思想をもつ伊東は、御陵衛士を結成し、新選組の中から何人か連れていってしまう。その中には藤堂もいるのだ。
そして、藤堂は新選組の手によって殺される。
なぜだか、花織の頬には涙がこぼれた。
私は、知っているのに救えない。
「ごめんね……」
この四文字が、空気の浅葱色に溶けていった。