如何にして、コレに至るか
一章。手枷足枷なくとも、逃げない理由は。
(一)
目が覚めたら、見知らぬ場所にいた。
ドラマでも、小説でも、使い古されたその言葉を体験する人はどれほどいるだろうか。
フィクションにこそ、使われるべきであるその展開。現実にあってはいけないことに、私は遭遇していた。
「ここ、は……」
重だるい体を起こす。
部屋の真ん中、フローリングという寝るには不適切な場所にいたためか、首や背中が痛む。
低血圧の気はないが、頭のぐらつきを覚えた。いっそのこと、また寝たい気持ちに駆られるが、そういった場所ではないと起きた時から実感している。
肌から味わっていた。
鳥肌が立つほどの恐怖。
見知らぬ場所にいたこともそうだけど、更に恐怖を上塗りするかのような光景があった。
フローリングに、僅かに廃れた白の壁。
ベージュのソファーに、ガラステーブル。
壁には天井ほどある大きな棚。
ここまでなら、どこにでもある、一般的にリビングと言って差し支えない部屋なのに。
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