如何にして、コレに至るか
二章。自分以上に大切な存在がいる心強さと恐怖心。
(二)
簡単に出す訳がないとは、目張りをした窓から察していた。玄関にも、何らかのことをしているだろうとは、明白。
それでも、もうしかしたらと希望を持っていた。
「うそ……」
その希望が潰(つい)える。
“徹底的に逃がさない”とした意思表示をするかのような物が、玄関に存在していた。
一つ、二つ、三つ、四つ、五つ。
片手で数える分だけの軽い数が、こうも重々しく感じるなんて。
玄関には、内側から南京錠がかけられていた。
五つの蝶番に、五つの鍵。
どれも一つとして開いてはいない。
試しに触れる。
びくともしないのは当然だ。
「っ、く……」
絶望と、ここまでやる誰かに対しての気味の悪さで、全身総毛立つ。
泣きたい声を押し殺した。背後に気を配る。あるのは、廊下と、二階へとつづく階段のみ。人影はない。
玄関先に私の靴があった。綺麗に並べてある。
どこからでも外に出られるように履こうと思ったが、少しヒールのついたブーツでは廊下を歩く際に音が酷いし、かと言って、持ち運びにも向いていない。
玄関には、私の靴しかなかった。もうしかしたら、靴箱の中に“誰か”の物もあるかもしれないけど、今はそんな余裕はなかった。
“誰か”が来れば、一発で私が視界に入ってしまうこの空間。二階からでも、一階のどこかの部屋でも、すぐに見つけられてしまうし、玄関として機能しないここは袋小路。
何とかして開かないかとの気持ちもあったけど、五つの南京錠を壊して逃げ出せるイメージなんか湧かない。
別の部屋に行こうと、踵を返す。
「……」
呼吸を整える。とりあえずは、一階から。二階の窓が開いていたとしても、飛び降りることは出来ない。
でも、ここまで徹底した監禁をする誰かが、私を逃がす真似をするのか。内側から鍵をかけるなんて、中の人が出られるわけがーー
「……、誰も出られない」
だったらそれは、私を連れてきた“誰か”にも当てはまる。
最悪の想定として、私を連れてきた“誰か”がいると行動していたけど、想定は事態となる。
最悪の事態。この家には、確実に、私以外の“誰か”はいる。
外側から、内側に鍵はかけられない。
それと鉢合わせない今は、運がいいとの話なんだろう。
会う確率を減らすためにも玄関から離れるべきだけど、別の部屋に行くのは賭けに近い。
その部屋に、“誰か”がいるかもしれないのだから。
竦む足でも、元の部屋に戻ろうと足先が動く。
でも、あの部屋から脱出は出来ない。中からバリケードしようとも、天井まである高い棚を動かせるわけがない。
どうする、どうする。と頭が混乱し始めた。
賭けるか、停滞か。
「みや、もと、さん」
彼が選択の後押しとなる。