如何にして、コレに至るか

「いきなり、知らない場所にいて怖かったよね。でも、もう大丈夫だよ。これからは、誰も入られないようにするから。もう、同じ失敗はしない。三葉は、ここで一生安全に暮らすんだ」

握られた手は、力の加減を知らない。
折れた手だ、加減する余裕もなく、こちらが軽く払えば、離れてしまう。

「三葉?」

どうしたの?と、立ち尽くす彼から距離を取る。

背後には出口。
この異常性溢れる家から逃げることは、最初からあった目的なのに。

「み、や……も」

逃げなきゃ。

「宮本さ……宮本さんも」



“彼と一緒に、逃げなきゃ”



「いいんだよ、三葉。怖がらなくても」

そんなことない。こんな家、一刻も早く出たい。

そうして、あなたの部屋に行きたい。
まだデートの最中じゃないか。あなたの部屋がいいって言って、それから行ってーー行かなきゃ。彼と一緒に。ここにはいたくない。いては、いけない。

「今のところ、君に付きまとっていたのは、あの男だけみたいだから。あれがいなくなった今、君を傷つける奴はいなくなった。ーー君がここにいる限り、誰も君に付きまとうことはないよ」

なだめなくてもいい。頭を撫でてくれなくても、あなたが無事なことに安心出来るんだ。でも、ここは危ない。こんな場所に、あなたを残していけない。ここは、あいつの家なんだ。私や彼に付きまとい、暴力を振るうような男に相応しい家で。

「すぐにでも住めるようにしたんだ。一階に、君の部屋もある。同じ物を揃えたから
、あいつが入った部屋の物は捨てよう。引っ越して生活環境が変わると、ストレスになるって言うだろ?だから、前々から準備していたんだ。何か足りない物があったら言って。それとも、やっぱり俺と一緒にいたい?同じ部屋にする?」

彼の家じゃない。宮本さんは違う。宮本さんの住む場所はこんなところじゃない。だから、逃げなきゃならない。

「俺の寝室、三葉の写真飾っているんだ。初めてのツーショットもある。四年前から片思いして、やっと両思いになってからの写真だから、大きく飾っておいたんだ。他のは全部、こっそり撮っていたものだから。あ、嫌なら処分するよ。恥ずかしがり屋だものね、三葉は。この部屋のコレクションも、キッチンの物も嫌なら処分する。俺にとっては宝物ーー大切な人が使っていた物だけど、三葉が一番だからね。君の望むようにするよ。三葉、あれ?泣いている?」

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