遊園地は眠らない
もう下沼さんは体全体で震えていた。

泣き声が黒い袋の中から聞こえている。

「許して・・・。許して」

その声はみんなには届かない。

そこにいる人たちの顔には笑顔があふれていたから。

紗栄子がロープを雅哉に渡す。

それを受け取ると目の前で引っ張ってみせた。

すばやく下沼さんの足首にそれをくくりつける。

「いやああ!」

立ち上がって駆けだした下沼さんが、すぐにロープに引っ張られて転倒した。

顔から床に落ち、痛みで転げまわった。

雅哉の目が見開き、興奮したように顔を輝かせた。

ロープの端を、柱にくくりつけ固く結ぶ。


息が荒い。
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