遊園地は眠らない
藤森、と名乗ったその女性は、メモ帳を開いて私を見た。

急にわきあがる緊張。

取材なんて受けたことなのに、どうしよう。

「何を話せばいいんですか?」

そう尋ねると、藤森さんは軽くうなずく。

「あったこと全部話してもらえるかな?」

そう言いながら、右側に三脚で立ててあるビデオカメラを操作した。

ピッと電子音がして、録画の赤いランプが灯る。

「全部…」

「そう。はじめから順番に」

「…」

私がビデオの方を見ているのに気づいて、藤森さんは、
「ああ」
と笑った。

「これは記録用だから、気にしないで。あとで文字に起こすときに必要なだけだから」

< 3 / 351 >

この作品をシェア

pagetop