噎せかえる程に甘いその香りは

「え。ちょ、なに…」


必死の形相で飛びかかってきた部下の田中にやや及び腰になりつつ、ちらりと仄の方を伺えば、田中の叫び声に何事かと言う顔をコチラに向けていた。

あ。仄、ちょっと待って―――


「大変なんですよ!発注ミスで納入数が全然足りないって、今取引先から連絡があって!」

…………。


「はぁっ!?」


思いがけない報告に俺は勢いよく田中に顔を戻した。


「数足りないって、どのくらい!?」

「一桁違いで。」

「~~~っ。納入先に謝罪と、納期どれだけ遅らせられるかの確認……は、俺がしておく!田中は在庫確認して、とにかく定数確保する努力してくれ。」

「分かりました!!」


田中と共にオフィスに向かって走り出し、もう一度仄の方を見たけれど既に彼女の姿はなく……


くそっ…どうしてこう間が悪いんだよっ。


ぶつけ所の無い不運を嘆きながら、俺は仕事に奔走する羽目になった。






***

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