噎せかえる程に甘いその香りは
「いえ、もう良いんです。もう、あれは…」
「俺の迷惑を考えての遠慮なら無用だ。寧ろ仄が喜んでくれるんだから俺としてはいくつでも贈ってあげたいくらいなんだから。」
「ちが、そんなんじゃ…。ゴメンナサイ。本当にもういいんです!」
「仄…」
「もう、いいですから!本当に…私の事はもうほっといて下さい!!」
吐き捨てるように言ってしまってから、シマッタと思った。
蓮実さんは何も悪くないのに。
葵さんを怒らせた八当たりを蓮実さんにぶつけてしまって。
困ったような顔をしている蓮実さんに泣きそうになってしまう。
なんとかその場を取り繕おうとした矢先、廊下に人の声がして言葉を呑みこむ。
どうする事も出来ないまま副社長の顔付きになった彼に儀礼的な会釈をするだけして、私は逃げるようにその場から立ち去った。
***