噎せかえる程に甘いその香りは
彼の知人の医療関係者に頼んでの兄妹DNA鑑定。
それで私は彼と片親だけ血の繋がった兄妹だと判定された。
その判定に態度が変わったのは私ではなく、寧ろ蓮実さんの方だった。
その時には既に蓮実さんは独自に調査を依頼し私の母や私の事を調べていて。
母一人、子一人の裕福でもない生活。
母は愛情を一杯注いでくれて私は決して不幸なんかじゃなかったけれど。
現実的には働いていた母との生活は擦れ違いも多く、二人でゆっくりする時間もなければ、子供らしく甘えた記憶にも乏しかった。
そんな私の生い立ちを蓮実さんは不憫と感じたのだろう。
本当の妹のように大切にしてくれるようになった。
「副社長には本当に感謝してます。腹違いの兄妹なんて疎まれて当然ないのに、独りぼっちの私をいつも気にかけてくれて。」
改めて感謝を口にすれば、蓮実さんは少し苦しげに微苦笑し視線を伏せた。
「俺が純粋な優しさだけで仄を大切にしてきたのだと思っているなら君は本当にお人よしだ。俺は自分の罪悪感を減らすためにやってるんだよ。俺は君を酷く傷付けた……」
この人こそやっぱりお人よしなんだと思う。
消沈する彼に私も微苦笑を零す。