文学少女と甘い恋
「そっかぁ。その方がいい?」
「いいんじゃないですか、多分。もし相手が好きじゃなくても意識させて、好きにさせればいいんですよ」
「うん、じゃあそうする」
完璧に失恋したなぁ、と思いながらも、甘樫くんのにっこりと笑った顔に体が熱くなる。
あぁ……なんてやっかいな感情なんだろう。
わたしのような脇役、王子様が選ぶわけがない。
だって王子様に選ばれるのはいつもお姫様なんだから。
それを分かっているのに捨てられない、消せない感情。
ほんとにやっかいだ。
「雨宮さんの名前って"ゆゆき"って言うんだよね?」
「? そうですけど」
というかいい加減に離してほしい。
「んーと、じゃあ"ゆゆ"って呼ぶね」
「…………は?」