文学少女と甘い恋
そっと視線を本に戻すが、目は文字を追うだけで頭の中に入ってこない。
当たり前だ。
意識はずっと彼に向いている。
カタン、と小さな音をたてて隣の席に人が座る気配がした。
「おはよう、雨宮さん」
「おはようございます。甘樫くん」
できるだけ表情を動かさずに返事をする。
チラ、と見ると甘樫くんがニッコリと魅力的に笑っていて。
あぁ、もはやその笑顔は脅威ですよ甘樫くん。
周りの女の子たちがノックアウトされてます。
わたしは騒がしく動く心臓を落ち着けるが如く、秘かにため息をこぼした。