文学少女と甘い恋
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甘樫くんがす……(ごほん)わたしの心の中に存在するようになったのはいつからだろうか。
よくよく考えてみると至極単純だったような気がする。
つまり、わたしもあの甘い笑顔に殺られた一人だ。
我ながらそんなことで心を奪われるとは不甲斐ない。
とは思うものの、一度芽生えた想いはそう簡単には消えてはくれない。
自分でも初めての感情だったため、消す方法さえも分からない。
一時期は途方に暮れたが、わたしみたいなクラスメートAやら通行人Bみたいな脇役、王子様が気にかけるはずもない。
そう考えると少しラクになった。
わたしはただ、この淡く光る強い想いを胸に秘めつつ、雪のように溶けて蒸発して消えていくのを待てばいい。
……今のところそんな兆しは毛ほどもないが。