文学少女と甘い恋
地獄の責め苦のような天国への誘(いざな)いのような時間を耐え抜き。
放課後一番にわたしは図書室に向かった。
と言ってもここは旧図書室。
人が来ることは滅多になく、わたしの憩いの場所となっている。
静かな空間、時折外から部活の声が聞こえるが、目立つものではない。
自然と体が軽くなる。
カバンを読書スペースにあるテーブルに置き、最近ハマり始めた本を探す。
「……あ、あった」
深い緑色に金の少し剥げた文字で『小倉百人一首』と書いてある。
言わずもがな、百人一首の本で解説やら時代背景やら、なかなかに面白いものが揃っている。
ちょっとだけ口許を緩めてテーブルの方へ向かった。
そしていつものように静かで穏やかな時間を堪能してから家に帰ろう。
……なんて考えは一瞬のうちに木っ端微塵になった。