文学少女と甘い恋
「人に知られまいとつつみ隠していたが、とうとうわたしの恋心は顔色に現れてしまったことだ。
『物思いをしているのか』と、人が尋ねるまでに」
甘いテノールの声がわたしの耳に直接流れ込んでくる。
それはまるで甘く痺れる毒のようで。
ジワジワと広がる感覚に思わず体が熱くなった。
「恋愛の歌だねー」
「そ、う…ですね」
心臓うるさい。
いっそのこと止まってしまえ、と思いながらあくまでも表は冷静に。
「雨宮さんはこういうの読むのー?」
「まぁ、はい。面白ければジャンル問わずいろいろと」
「そっかぁ」
こんなこと書いてあるんだねぇ、と言いながら手元を覗き込んでくる。
そうすると自然に顔も近づくわけで。