文学少女と甘い恋
「んー、雨宮さんがいたから」
「?」
わたしが、いたから……?
頭の中に『?』が浮かぶ。
別の可能性も浮かぶといえば浮かぶけど。
……そんな漫画的な展開、あるはずがない。
おめでたい考えを頭の中から追い出した。
「………っ!」
ふわっと柔らかく包まれた右手の温もりにぴくっと体が跳ねる。
「ふふ、雨宮さんの手ちっちゃいねー」
いやいやいやいや。
な、何をしているんだ甘樫くんは。
触れている右手がじんわりと、わたしとは違う、甘くあたたかい体温に染まっていく。
「あ、の…手……」
いつまでもこうしていたい。
でもそんなことをしているわけにはいかない。
あぁ、気が狂いそうになる。