線 香 花 火
誕生日の夜

「線香花火しよっか。」

彼は、そう言ってコンビニの袋から線香花火をチラリと見せた。

それに、私は笑顔で頷いた。

車から降り、バンッと車のドアを閉める。

「いつのまに買ったの?」

彼の腕に絡み付きながら、私は尋ねた。

「ちぃがマヌケ面して寝てる間。」

「ひっど〜い!マヌケ面してなんかないもん!!」

ハハッと彼は笑って、私の頭をポンポンと叩いた。

むぅ…と膨れる私に、彼は目を細めて「可愛かった。」と言った。

「…本当?」

私が訊くと、彼は「本当。」と言って、優しい笑顔を向けた。

私の膨れっ面は、いつのまにか綻んでいた。


< 1 / 12 >

この作品をシェア

pagetop