線 香 花 火
「♪〜♪…」
鼻唄を唄いながら、あたしはプスリと夏樹の腹部に線香花火を刺した。
ライターで火を着ける。
パチッ、パチッ…パパパパパパ…
不規則な長い火を出しながら、小さな花火は闇を躍る。
「…千夏を殺した罰よ。」
ポタリ、一筋の涙が頬を濡らした。
「…な〜んてね。全ては計画通りよ。明日の新聞にはこう載るでしょうね。
『三角関係、浮気相手殺し、自らも自殺』。」
そうだ、千夏の爪には夏樹の皮膚が。
夏樹に刺さったナイフには、彼自身の逆手の指紋が。
誰もあたしを疑わない。
世間には、あたしは浮気された可哀想な恋人として映るだけ。
…フ、笑みが鼻から抜けた。
「ま、せいぜい線香代わりに受け取ってよね。」
ポタッ、小さな火の塊が、夏樹のえぐれた腹部に落ちた。
線香花火の先から出た煙が天に昇る。
それはまるで、本物の線香のように。
《Fin》