甘い王子様の愛しい人
「これであってますか?」
「う、ん。大丈夫だよ」
あ、危なかったぁ。
よかった、触れなくて。
今こんなことをしたら確実に嫌われてた。
オレ、よく耐えた。
さっきとは違う意味で心臓がドキドキしている。
「よかった。ありがとうございました」
「どういたしましてー」
あぁ、もう終わっちゃうのかぁ。
名残惜しい。
もっといっしょにいたかったのになぁ。
「あ」
「え?」
なんですか?と首を傾げる雨宮さんに、オレはそっと手を伸ばす。
サラリ、絹糸のような髪が指の間を通っていく感触に思わず酔いしれる。
爽やかなアクアソープのシャンプーの香りが、理性を溶かしていきそうで。
「…はい、取れた」
もっと触れていたい、という欲を押し込めて、糸屑を見せる。
「あ、ありがとう、ございました……」
「?」