チョコレートと甘い罠
「えっと、その‥‥。」
(まずいっ!この状況で渡すなんて‥‥心の準備が‥‥っ!)
ギュッ。
持っているカバンを握り締める。
教室を飛び出すとき、慌てて掴んだカバン。
この中には、昨日、料理が苦手な私が、なんとか作った不格好なチョコが入っている。
「ほら、渡せよ。」
「だっ誰が渡すかっ!!」
いつもの勢いで返すけど、手に持っているのはチョコ。
知らぬうちに、渡す準備は整っている。
「今野‥‥俺のチョコ、ちょうだい?」
「っ!」
あんまり可愛く首を傾げるから、顔がぼっと熱くなる。
「〜〜っ!!はいっ!!!!!」
バシッとチョコを押し付けて、俯く私。
「ま、不味くても知らないからっ!」
「‥‥。」
ぐらっ。
渡して数秒後、突然私の体が傾いた。
ギュッ。
背中に大きな手の感触。
目の前には少し硬い胸板。
(こっ、これは‥‥!?)