チョコレートと甘い罠
「佐野っ!!」
数分走り続けて、佐野らしき後ろ姿を見つけた。
必死にその後ろ姿を呼び止める。
「‥‥今野?」
少し驚いたような顔をする佐野。
その佐野の手を慌てて掴む。
「佐野!!あんた、私のチョコが欲しかったんじゃないの!?」
自分でも訳かわからないようなトンデモ発言をする。
けど、私は必死だった。
「私のチョコが欲しいなら、あんたもっと粘りなさいよっ!!」
「はっ!?」
「あんたに言われてせっかく私が作って‥‥っ!」
途中までいいかけて、慌てて口を塞ぐ。
けど、遅かった。
「ふーん‥‥。俺のチョコ、あるんだ?」
にやりと音が鳴るくらい、不敵な笑みを浮かべる佐野。
そうなのだ。
なぜだかわからないけど、昨日チョコを作った私。
手作りだなんて恥ずかしくて、ずっと渡すか迷っていたんだけど‥‥。
なぜか、佐野のあの悲しげな顔を見て、渡さなきゃいけないような感じがした。