ホワイトデー最終決戦
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 すっかり闇に暮れた帰り道、和歌の家までの道を二人で並んで歩いた。


「楽しかったね。久しぶりに行った、カラオケって。声出すからすっきりするねー」

「ああ」

「洋介って、カラオケしたりするんだね。四人で行っても一番歌わないじゃん。私、洋介はカラオケ苦手なのかなって思ってた」

「それは、お前と克司がマイクを離さないからだろ」


サラリと言い返すと、和歌が柔らかく笑った。


「なんか今日の洋介、克司みたい」


……は?


「克司って昔っから何かある度に大騒ぎしてさ。次何をしでかすか分からなくて。いつもワクワクしてさぁ。去年の体育祭覚えてる? すっごい面白かった」


和歌の弾む声に、胸が重く軋んで、苛立ちが募ってくる。


克司克司って、克司のどこがそんなにいいんだ。

克司より俺の方が、ずっとお前の事見てるのに。
ずっとずっと、お前の事好きなのに。

笑っていた和歌の表情が、小さな溜息とともに陰る。


「……でも、克司が最近落ち込んでんのも、きっと私のせいだね」

「はぁ?」

「だって。春香がああいう態度とってるのは私のせいだもん」

「バーカ」


そんな寂しそうな顔するなよ。
抱きしめたくなる。

壁ドンとか、今流行っているけど実際にやったら痴漢呼ばわり決定だろうし。
でも少しなら。
そうだ、ちょっとくらいなら。

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