ホワイトデー最終決戦
3.癒し系に苛ついて
それからの一週間は特に大きな事は起こらず、流れるように過ぎていく日々だった。
俺と克司は今日も部活だ。
剣道場は校舎から少し離れたところにあるので、渡り廊下を伝って、長々と歩いていかなければならない。
今日は暖かく、くすぐったくなるような風が、木々の合間から吹き込んでくる。
「なんか風ぬるいな」
「だな。三月だし春は近いかー」
克司は頭の後ろで両手を組み、俺に一歩近づいてくる。
「なぁ。ホワイトデーってどうすんだ?」
「どうって。なにも?」
「じゃあさ、四人でデートとかどうだよ。バレンタインの時みたいに」
「はぁ?」
この大馬鹿。
バレンタインの二の舞いをさせる気かよ。
「嫌だよ。お前らは両思いだろ。二人で出かけろよ」
「洋介と和歌は違うのか?」
「ちがっ……」
理性を保つ線が切れそうだ。
何なんだよ、コイツ。
鈍感にも程があるんじゃねぇの。
和歌が好きなのはお前だバーカ。
ああもう、ムカつくムカつく。
「俺達は違う。和歌は俺の事が好きな訳じゃねーの」
「ってことは洋介は好きなんだな?」
あああああ。
こんなバカの誘導尋問に引っかかるなど何たる不覚!
「あ、当たりだな。よしよし、俺が協力してやるからな」
うんうん頷く克司。
イヤ、結構ですから。ホント辞めろ。お前は余計なことすんな。
何より、お前に余裕ぶっこかれるのがムカつくんだよ。