ホワイトデー最終決戦

思った瞬間に、教室に飛び出していた。


「おい」

「あれ、ようす……」


振り向いた和歌を、春香から引き離す。

今現実に、泣きそうになっているのは春香の方。
でも、きっと心がズタボロになってるのは和歌の方だ。


「いい加減にしろ」


俺は春香を睨む。
一般に癒し系だと言われる大人しい春香を。

和歌が望んでいようといまいと、俺は和歌を守る。
何の見返りが無くてもいい。


「春香は克司が好きなんだろ。だったら遠慮なんかすんな。いい子ぶるのやめろよ」

「洋介くん?」

「和歌の気持ち、分かってんのかよ。なんでこいつがお前にそんな事言ってやらなきゃならないんだ」

「ちょっと、洋介」


和歌が、俺の腕を引っ張って止めようとするので、振り払うようにして制した。

俺は嫌なんだよ。
和歌に、こんな事させるのは嫌なんだ。


「和歌は、相手が春香だから諦めたんだろ。それくらいの事わかんねーのかよ。なのに、気を使われたんじゃ余計辛いに決まってるだろ!」


和歌の手の動きが止まった。驚いたように俺を見上げ続けている。


「和歌は、好きな男をそんなに簡単に諦めるような女じゃない。春香なら仕方ないってそう思えたから、だからお前らの背中押したんだろ。お前がしなきゃいけないのは遠慮することじゃない。和歌を諦めさせてやることだ」


< 19 / 29 >

この作品をシェア

pagetop