ホワイトデー最終決戦
「……克司くんと、話してくる」
ひとしきり泣いた春香がようやく顔をあげ、俺にも聞こえるくらいハッキリした声を出した。
「ウサギちゃんみたいよ、春香」
そう言って春香の目尻をぬぐう和歌。
お前こそウサギのようだよ。
「克司なら、剣道場にいるぞ」
「うん。ありがとう、洋介くん。和歌も、ありがとう」
「うん。頑張れ、春香」
教室を出て行く春香を、俺達は並んで見ていた。
和歌は俺に背中を向けたまま、一言も話さない。
やがて春香の靴音が聞こえなくなる。と同時に、力が抜けたように和歌が座り込んだ。
「おい、大丈夫か」
「あー言っちゃった」
「座るならちゃんと椅子に座れよ」
「うん」
手近の席に腰掛け、俺もなんとなく隣に座る。
泣いて赤くなった目に手のひらを押し付けて、はーと大きく一息。
「スッキリしたのか、お人好し」
「お人好しじゃないよ、別に」
「嘘つけ。ついこの間嫌だって言ったくせに何自分から春香けしかけてんだよ。自己犠牲精神とか虫唾が走るわ」
「嫌なのも、上手く言って欲しいのもどっちも本音なの。オンナゴコロは複雑なんだよ」
「あっそ。わけわかんねー」
何故か口喧嘩のような会話になっていく。
おかしいな、どうして俺は和歌には上手く優しく出来ないんだ。