ホワイトデー最終決戦


「訳分かんなくなんて無いじゃん。洋介、エスパーみたいに私の気持ち、言いあてる」


ポソリと和歌が続ける。赤い目に見つめられて、心臓が落ち着かなくなってきた。


「なんで分かるの? 私ってそんなに分かりやすいかな」


小さな口が小刻みに動く。泣いた後だからか、いつもとは違う掠れたような声。


「……分かんねーよ。一番知りたいことが全然分からない」

「何? 知りたいことって」


和歌の瞳とぶつかる。その潤んだ瞳と赤く染まった頬。

反則だろ。
俺が理性をどっかに放り出しても仕方ないだろ、そんな顔されたら。


「和歌が、俺を好きになるのか知りたい」


和歌の頬が、ぴくりと動いた。
さっきまでの半笑いの表情が、ぎこちなく固まって戸惑いのそれに変わっていく。

困らせてる。
そう思ったけれど、ここで引いてなるものか。

胸の鼓動は最高速度で、平静な顔を保っているのが嘘みたいだ。
俺はもうひと押ししようと前のめりになり、彼女の頬に手をあてた。


「和歌」

「よ、ようす……」

「なあ……」


答えてくれ。
俺がこんなふうに触れることは嫌じゃないか?

色素の薄い和歌の前髪からはシャンプーの香りがする。
その下の目は落ち着きなく彷徨っていて、……だけど振り払われないから、俺はそのままじっと顔を覗きこむ。



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