ホワイトデー最終決戦

「まあ、考えないことも無かったけど、自分では作れなかった」

「良かったー。辛子飴とかよこされたらどうしようかと思った」


友達の顔で、笑う和歌。
飴の意味なんて、一つも知りはしないように。


「……俺が、バレンタインに言ったことは嘘じゃねぇから」


声に本気を込めると、和歌が黙って神妙な顔をして俺を見つめる。
そして困ったように俯いた。

和歌はまだ克司が好きなんだろう。
春香との気まずい関係を解消するだけでも、相当頑張ったのも知ってる。

だから、俺の告白への返事まで急かすのは可哀相だとは思う。

だから。


「飴の返しの意味は俺も好きだってことなんだと」

「へ?」


和歌から瓶を奪い、飴を一つ取り出す。


「ほれ、食え」

「ちょっと」


無理矢理口に飴を押し込まれ、和歌は変な顔をしたが、すぐに「あ。美味しい」と機嫌を直す。


「だからこれを全部食べ終えたら、お前は俺の告白を受け取ったことになるわけ」

「はぁ?」

「ゆっくりでいい。待つから。だから俺と付き合う気になったら、空瓶を返せ」


我ながら回りくどいことを言っているけれど、これなら時間をかけつつも俺の気持ちは伝え続けられるわけだ。


「……何なのよ、それ」


和歌は顔を真っ赤にしたまま、瓶と俺とを見比べる。
そして、中からレモン色の一つを取り出し、俺の口元へ差し出す。


「じゃあ洋介も手伝って」

「は?」

「一人より二人のほうが早く空になるでしょ」


それは、……どういう意味だ?
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