ホワイトデー最終決戦
そして、季節は初夏を迎える。
その頃には、俺は和歌の気持ちに気づいていた。
まるで男友達のように克司とどつきあったりしながらも、その後で必ず嬉しそうに笑っている。
嬉しそうって言うよりはニヤニヤしていたかな。
じゃあ克司はどうなんだ? って観察してみると、コイツはコイツで和歌と楽しそうにどつき合ってる割には視線は春香にばかり向いている。
克司は一番背が高いから、意図的に見上げないと眼が合わない。だから、一番チビである和歌は気づかなかったんだろう。
克司は人知れず春香への気持ちを温めている。そう思うとちょっとむかついた。
最後に春香。
大人しくて、俺から見ると何を考えているのか分からない。
ハキハキ物を言う和歌とは対照的だが、妙に仲はいい。
彼女は綺麗に恋心を隠していた。皆でいるときには。
けれど、一人でいるときは違った。
たまたま廊下から、教室に一人でいる春香を見つけたときに、それは分かった。
彼女は克司の机にそっと触れて、ただまっすぐに視線を落としていた。
時折り落ちる甘みを含んだような溜息は、どう見ても言えない恋を思い悩んでるようにしか見えなかった。
そしてそれにも、イラついた。
だってそうだろ。
和歌が克司を好きなの知ってんだろ。
なのに、隠れて克司を好きだって言うのか。
和歌が気づいたらどんだけショックを受けるかとか、考えたことあんのかよ。
四人の中で一番の傍観者であった俺には、三人の間では何も動いていないのに、三角関係の結末が見えてしまっていた。