かさぶた
はぁ、と重いため息。
「もう決まったことなんですよね?
仕方がありません、やります」
「お、よかった。頑張れよー」
この中年男性が先生でさえなければ……。
そうしたら、一言くらい文句を言ってやれたのに。
……なんて、どうせ私には無理ね。
私は意気地なしの利己的な人間だもの。
「あと、ついでにこれ、頼むわ。
生徒会の奴ら、他の仕事で忙しくて死にそうでなー」
そう言って指差されたのは、ビニール袋に入った大量の造花。
「卒業生の胸元に差してるものなんだけどなー、このテープでくるっと巻くだけ。
ほーら簡単、簡単」
「量、多いですけど……」
「そこはほら、岡村とやれば出来るから」
岡村くんと、こんな面倒な雑用?
長時間かかりそうなのに、一緒に作業?
……ふたりっきり?
そんなの無理に決まってるじゃない!
「ちょっと、先生、」
私の声を遮るように響くチャイムにはっとする。
「確か次、移動だろ? しっかりなー」
「〜〜っ、失礼します!」
来年は担任が生徒会担当のクラスにだけはなりたくないわ!