かさぶた




誰もいない教室から化学の授業のためのファイルと問題集にノート、筆記具を急いで取り出す。

今日は実験ではないから、合同で一緒に授業を受けている1組の教室へと走り始めた。



カチャカチャとシャーペンが擦れる音。

重たい髪も揺れて、ずれた眼鏡を押し上げた。



私は化学だから、岡村くんは今から家庭科を受けるんだろう。

適当だけど、なんだかんだで食べられるものを作っていたな、と去年の授業をふと思い出した。



こんな料理で大丈夫なのかとハラハラしていたけど、食べてみたら意外に美味しくて、すごく驚いた記憶がある。

とても、懐かしい。



同じ授業を受けていた頃と今では、近かったわけではない私たちの距離はより開いてしまった。



たとえば、他の選択科目は私が数Bや物理で、岡村くんは発展国語と地学。

必修以外はかぶることなんてひとつもない。



科目が違えば思考も、行動も、なにもかも違う。

考えることも、できることもかぶらない。



私たちを一緒にしたって、なにかが重なることなんてないのに。

先生は馬鹿で……残酷ね。






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