かさぶた
「岡村くんは確か、来月が誕生日だったわよね」
「おおー! 委員長さすが!
よく覚えてたね!」
好きな人のことは、気にしないようにしよう、忘れたい。
そう思ったことこそ意識してしまうもので。
だから、岡村くんに関することは私の中に染みついてしまっただけ。
別にすごいことなんかじゃないの。
「やっぱり、当日は彼女さんと一緒に過ごすの?」
なんて、答えのわかりきった質問。
答えが返ってくる前に、自分で落ちこむ。
「いや、違うよー」
「あ、もしかして受験の結果がまだだった? ごめんなさい、悪いこと訊いちゃったわね」
そうよね、相手は受験生。
簡単に合格できるわけじゃないもの。
友だちと過ごす路線だってある。
ただ私と過ごす可能性がないことくらいしかわかりきったことはない。
「はは、委員長。
気にしすぎー。先輩、もう受かったよ」
「そうなの? おめでとう」
「うん、ありがとう。
だからね、……違うんだよ」