かさぶた
止血
◇
式が終わり、あちこちに泣き顔が溢れている。
そして、それと同時に笑顔も。
卒業するということは、悲しみも喜びも全部含まれていることなのね。
「岡村くん」
「委員長……」
ぼーっと空を見上げる彼の隣に立つ。
式が終わって、生徒会の人たちが片づけを始め、気がつけば体育館の中に岡村くんの姿はなかった。
体育館裏で見つけることができて、少しほっとする。
「行きましょう」
「……でも、さ、」
「いいから行くのよ!」
ぐいっと強く背を押す。
「うわっ」
先生に片づけを手伝ってくれと言われたのに、私、断ったのよ。
なんだかんだでいつも断らなかったのに、初めて無理ですって言ったのよ。
あなたのためなら私、……きっとなんでもできるの。
動きそうにない彼の手を引いて、走り出す。
いなくなる前にどうか。
……どうか、間に合って。