かさぶた
キョロキョロと顔を動かして、すらりとした彼女の姿を探す。
最初は私に腕を引かれるだけだった岡村くんも、次第に本気で探すようになってきた。
そっと腕を離す。
その時、
「志乃先輩!」
思わず、といった風に叫んだ岡村くん。
何度も見かけた彼女が振り返る。
私は黙って彼の背を押す。
そして1歩下がってふたりを見守ることにした。
だって、私は部外者だから。
ふたりの話に参加するなんてできないもの。
「……聞きたいこと、ある」
「京介……。
うん、……うん、いいよ。
あんたが来るようなら、話そうと思ってたから」
くしゃり、と笑って……それでも綺麗な彼女。
「お茶しに行こっか。そこで話しよう」
「……うん」
「あの子も連れておいで。
奢ってあげるから」
志乃さんが指差したのは……私。
関係ない、私。
「いえ、私は……」
「京介が来れたのって、きっとあんたのおかげでしょう。
こいつ、意気地なしだから、自分から来るなんてありえないもん」
ねー、と笑う志乃さんと少しふてくされた様子の岡村くん。
思ったより押しが強い彼女に言われ、私は小さく頷いた。