かさぶた
◆
志乃さんの前に紅茶。
私の前にコーヒー。
そして、岡村くんの前にココア。
全員分の飲み物が置かれたところで、志乃さんが大きく息を吐いた。
「まず、わたしは京介に謝らないといけない。……本当のことを話すのを恐れて、逃げて、ごめんなさい」
テーブルに額がつきそうなほど、深く頭を下げられる。
「……ちゃんと教えて欲しい。
全部、知りたい」
うん、と志乃さんは返した。
心に決めたように、まっすぐ真剣な瞳。
さっきまでかすかに揺れていたとは思えない。
「よくある話……他に好きな人が、できたの」
「……付き合うことになったんですか?
それって、浮気だったってことですよね」
「委員長、」
止めようとする岡村さんを制する。
私をふたりの話し合いに参加させたのは、志乃さんよ。
こんな近くで岡村くんを傷つけられそうとなったら、黙ってなんていられるはずがない。