かさぶた
「だから、もう京介とは付き合えないと思った。
先生を誰よりも想うようになった生徒の〝志乃ちゃん〟は、京介の彼女の〝志乃先輩〟じゃなかったから」
なんとなく、だけどわかってしまった。
「楽しかった。
毎日、あんたといるのが幸せだった」
ふたりの、おしまいを。
「寄り道して食べたソーダのアイス。
迷子になった初デート。
恥ずかしくてつけられなかったお揃いのストラップ。
みんな大切だった」
「……」
「わたし、京介が大好きだった」
「っ、」
ぽろりと涙が頬を伝っていった。
そしてふわりと、花が開くように。
優しい、優しい笑顔。
それは、志乃さんの今までで1番の表情だった。
「志乃先輩……」
「なに?」
涙を拭って、志乃さんが岡村くんに言葉を促した。
「────────卒業、おめでとうございます」