かさぶた
鎮痛
◇
すっかり暗くなった帰り道。
私は岡村くんの隣を歩いていた。
店を出たところで志乃さんとはお別れした。
きっともう、会うことはない。
「……ねぇ、岡村くん」
「んー? なにー?」
「好きって、言わなくてよかったの?」
岡村くんが傷つくとわかっていながら、私はそう尋ねた。
「先輩が好きな人の迷惑になりたくないって言ってたじゃん?」
「そうね」
「なら、おれも先輩と同じでいようって思ったの」
「っ……」
「それに、おれはまだ『好きだった』なんて言えないから」
今もまだ、好きだから。
きっと、そういうことなのよね。
「委員長、ありがとね」
ふにゃりと岡村くんが柔らかく笑う。
「背中押してくれて、ついてきてくれて、ありがとう」
ただの勝手な行動。
私のしたことで、岡村くんは余計に傷ついたりもしたのに、それでも。
ありがとう、と言えるあなたがやっぱり大切だと思う。
その気持ちは自分の中で唯一愛おしいと思えるものの、欠片。