かさぶた
「おれ、まだ友だちに先輩と別れたって言えてないんだ」
「そうなの?」
「うん。だから、誕生日もひとりなの」
別れた直後の誕生日がお祝いされないなんて、きっとすごくさみしいわよね。
こういう時は、パーッと派手に騒いで気を紛らわす方がいいのに。
ああ、でもまだ口にできないなら、仕方がないのかしら。
「だからさ、委員長がお祝いしてよ」
…………え?
「そうだなー、おれ、ケーキが食べたいなー。……委員長、作ってよ」
くしゃりと笑った岡村くんの笑顔は、街灯の光でどこか揺れていて。
だけど、とても……綺麗だった。
初恋は傷だらけ。
恋は甘くない、優しくない。
痛くて、……痛くて。
だけど、それでも想いは変わらなかった。
無理やり蓋をしたって、目をつぶっていただけでは消えなかった。
クラスが変わってもきっと、この想いはそのままなのよ。
志乃さんと違って子どもだけど、私だって好きな人を大切にしたい。
そんな気持ちだってあるんだから。