TRIGGER!2
「へぇ。新しいドア、ねぇ。でも場所は分かってるのに何でわざわざ確認しに行くんだよ?」
「四階の人は、ドアの場所は分かります。ですがそのドアの種類までは分からないらしいんです」
「種類?」
「はい。彩香さんも聞いてますよね、ドアにはマンションの屋上のような固定型と、通じてもすぐに消える流動型があると」
それは知っている。
彩香はまだ漂う自分の酒臭さにげっそりとしながら頷いた。
「確認したら分かるのか?」
「分かります。少なくとも、一度ドアを通ってあっちの世界に行った人間なら」
日曜日の朝。
いつもは通勤する人で賑わう通りも、今朝はそれほど混み合ってはいない。
マンションを出てから、風間は駅方面に向かって歩いている。
車を使わないという事は、新しいドアはこの近くだという事か。
今の彩香は、どんなに近くても車で移動したい気分だが。
「じゃ、あたしにも分かるんだな?」
「そうですね。余程鈍感じゃない限り、分かります。流動型のドアは、通った時に違和感があるんですよ」
「違和感?」
聞き返すと、風間は頷く。
「腕を通しただけでも分かりますよ」
「どんな違和感なんだよそれ」
マンション屋上のドアを通る時には、違和感はない。
たから一番最初に彩香がドアを通った時も、まさかそこが異世界だなんて気づかなかったのだ。
この異世界は、生身の人間が居られる時間は一週間が限界。
もしも知らずに紛れ込み、そのままさまよって一週間が過ぎてしまえば、最初は記憶障害を起こし、最後には廃人同然になってしまうという恐ろしい空間だ。
「で、その新しいドアってどこにあるんだよ?」
「もう10分くらい歩けば着きますよ。佐久間クリニック、心療内科のお医者さんです」
聞いておきながら、彩香にとって場所なんてどうでも良かった。
重要なのは。
「うぇぇ・・・あと10分も歩くのかよ」
徹夜で飲み明かし、眩しい位の真夏の日差しの中を歩くことほど、苦痛な事はない。
無理やり朝まで付き合わせたジョージは今頃、自分のベッドで夢の中だ。
どうして自分がここまで意地になっているのかすら、分からなくなってきた。
「やっぱ帰ろかな」
「今まで10分歩いて来たんです、目的地も、マンションも一緒ですよ」
これだけの暑さなのに、風間の額には汗ひとつ浮き出てはいない。
ついでに言うと、ポマードで固められたヘアスタイルはいつもの事ながら、日曜日のちょっとした用事だというのに、仕事着であるスーツを着てネクタイまで締めている。
「四階の人は、ドアの場所は分かります。ですがそのドアの種類までは分からないらしいんです」
「種類?」
「はい。彩香さんも聞いてますよね、ドアにはマンションの屋上のような固定型と、通じてもすぐに消える流動型があると」
それは知っている。
彩香はまだ漂う自分の酒臭さにげっそりとしながら頷いた。
「確認したら分かるのか?」
「分かります。少なくとも、一度ドアを通ってあっちの世界に行った人間なら」
日曜日の朝。
いつもは通勤する人で賑わう通りも、今朝はそれほど混み合ってはいない。
マンションを出てから、風間は駅方面に向かって歩いている。
車を使わないという事は、新しいドアはこの近くだという事か。
今の彩香は、どんなに近くても車で移動したい気分だが。
「じゃ、あたしにも分かるんだな?」
「そうですね。余程鈍感じゃない限り、分かります。流動型のドアは、通った時に違和感があるんですよ」
「違和感?」
聞き返すと、風間は頷く。
「腕を通しただけでも分かりますよ」
「どんな違和感なんだよそれ」
マンション屋上のドアを通る時には、違和感はない。
たから一番最初に彩香がドアを通った時も、まさかそこが異世界だなんて気づかなかったのだ。
この異世界は、生身の人間が居られる時間は一週間が限界。
もしも知らずに紛れ込み、そのままさまよって一週間が過ぎてしまえば、最初は記憶障害を起こし、最後には廃人同然になってしまうという恐ろしい空間だ。
「で、その新しいドアってどこにあるんだよ?」
「もう10分くらい歩けば着きますよ。佐久間クリニック、心療内科のお医者さんです」
聞いておきながら、彩香にとって場所なんてどうでも良かった。
重要なのは。
「うぇぇ・・・あと10分も歩くのかよ」
徹夜で飲み明かし、眩しい位の真夏の日差しの中を歩くことほど、苦痛な事はない。
無理やり朝まで付き合わせたジョージは今頃、自分のベッドで夢の中だ。
どうして自分がここまで意地になっているのかすら、分からなくなってきた。
「やっぱ帰ろかな」
「今まで10分歩いて来たんです、目的地も、マンションも一緒ですよ」
これだけの暑さなのに、風間の額には汗ひとつ浮き出てはいない。
ついでに言うと、ポマードで固められたヘアスタイルはいつもの事ながら、日曜日のちょっとした用事だというのに、仕事着であるスーツを着てネクタイまで締めている。