TRIGGER!2
☆  ☆  ☆



 “スターダスト”。
 風間が美和と出会った当時は今ほどキラキラした内装ではなく、フロア全体に木目調の素材を使った、落ち着いた雰囲気のジャズバー“Agua azul(アグアアズール)”だった。
 ステージ横にはグランドピアノが置いてあり、生演奏で歌うジャズは人気だった。
 その専属歌手が美和だ。
 何回も通ううちに、彼女とも大分打ち解けてきた。
 今では、緊張もせずに話が出来る。
 だが、その日は少し、美和の様子が変だった。


「どうかしたんですか?」


 ショータイムの時以外は、美和も普通のホステスと同じように接客をする。
 今はカウンターの中で仕事をしている美和に、風間は話し掛けた。
 今日は歌もいつもより声が震えているような気がしたし、何よりも顔色が良くない。
 そんな風間に、美和は笑顔を向ける。


「さすが隼人よね。どんなに隠してるつもりでも、すぐに見破っちゃうんだから」
「そこは誉めて頂かなくても結構です。嫌な事でもあったんですか?」
「ね、当ててみて?」


 カウンターから少しこっち側に身を乗り出すような体勢で、美和は風間を見つめた。


「そんなの当てられる訳がない。私は美和さんのプライベートを知っている訳ではないし、ヒントすら聞いてないんですから」


 苦笑する風間に、そうよねぇ、と美和は口元に人差し指を当てて、考え込むような素振りを見せる。
 でも、と、風間はそんな美和を見つめ。


「オーソドックスに考えると、彼氏とケンカしたとか」
「当たり!」
「・・・ウソ、ですよね?」


 いきなり当ててしまったが、どうもウソ臭い。
 それに、彼氏、とは。


「それがね・・・」


 グラスを拭きながら、美和はため息をついた。
 うつむくその表情は、悲しい、と言うよりどこか辛そうだ。
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